2015年1月2日金曜日

ルノー・ルーテシア では日本の峠は無理

  2014年の走り納めということで東京・神奈川の県境を超える国道20号線の大垂水峠に行ってきました。年の瀬迫る12月30日の深夜ということもあり商用車の姿は全くといっていいほど見当たらず、他に走っているクルマは快適なほどにわずかで、ペースを乱されることの少ないいわゆる「ドライブ好き」か「走り屋」ばかりなのが有り難いです。おそらく1年で一番走りやすい日なんじゃないかという気がします。

  圏央道・高尾山インターの信号を過ぎると、国道20号は10km近く信号無しの峠区間に差し掛かるのですが、この最後の信号待ちには1台の先客はルノー・ルーテシアがいました。平和主義者なので強引な追い越しといった好戦的な態度なんてとんでもないと思ってますが、雑誌などでも「走り」のBセグと評判のこのクルマは本当に「走る」のか? できれば良いペースメーカーであってほしいな、なんて希望的憶測を展開して待っていました。その願いが通じたのか、出足こそ鈍かったものの後続車(私だけです)の存在を振り切るようにルーテシアは疾走を始めてくれました。まずは県境付近までの断続的に続く上り区間は、それほど勾配はキツいとは感じない程度で中速コーナーが中心です。

  前を走るルーテシアは1100kg程度のボディに1.2Lターボ(120ps)ですから、とりあえずヴィッツの1.5Lモデルと同等のスペックかと思いきや、低速トルク重視のダウンサイジング・ターボの特性(美点)を生かしていて、上り坂を感じさせない力強い加速がハッキリわかります。そういえば先日ドライブに行った山梨県の清里でもVWポロが登り坂で爆走していたのを見かけました。とりあえずルーテシアはコンパクトカーとは思わせない軽快な走りですが、ドライバーはコーナー通過可能速度を大きく超えて加速させるタイプのようで、ブレーキランプが頻繁に光ります。登り坂はどんなクルマでも燃費は4km/L以下くらいまで落ちこむので、貧乏性の私としては「ノーブレーキ走法」が最も心的負担が少ないという理由で、コーナー脱出可能速度を上限としする加速が身体に染みついていて、無理に追っかけることもせずにマイペースで行きました。

  頂上付近に差し掛かるまでに車間距離は100~150m程度ほど開きました。ここから先はダウンヒルとなります。車重の軽さが持ち味のルーテシアですから、得意であろうステージでどんな走りをするのかと思っていた矢先に、なんと下りの最初のコーナーで早くも執拗なブレーキランプが点滅します。これは予想外の出来事で車間が一気に縮まり始め、次のコーナーでは不本意ながらもテール・トゥ・ノーズの状態になりました。スタッドレスタイヤ装着に加えてドライ&部分凍結路ですから安易な接近戦は避けたかったので、すぐにブレーキを踏み車間を取りました。走りのリズムをやや乱されてちょっとだけイライラしてきます。少々不都合があるため実際の車速は申し上げられませんが、私は上りも下りも平均的なコーナー速度に合わせて走るのでほぼ同じですが、前を走るルーテシアは明らかに上りより下りの方が遅いようです。

  FF車のスポーティさでは一目置かれる存在のルノーに対して少々失礼ですが、小賢しいターボエンジンでトルクとパワーを過剰気味に盛るよりも、下り急勾配でしっかり踏ん張れるシャシーと足回りを作ってから「スポーティ」と宣伝すべきじゃないですかね。ドライバーの腕も多分にあるかもしれませんが、やはり初心者でもある程度はスムーズに走れることがクルマの実力を測るバロメーターなのだと思います。いくら雑誌媒体を買収してチヤホヤさせて、まるで「スポーツカーに最も近いコンパクトカー」と思わせようとしても、やはりあくまでノートのシャシーという素性では、日本の急峻な峠でのダウンヒルはやや厳しいかもしれません。

  ただでさえフロントヘビーなのに、さらに前傾で車重が載るので、ハンドリングもブレーキングも想定を超えてしまうようで、上りですっ飛ばしたペースで進入すればそのままガードレールに突き刺さる危険すらあるかもしれません。ニュルブルックリンク北コースに車両を持ち込み長期のテスト走行を実施しているルノーですが、もしかしたらそれが完全に裏目に出ているかもしれません。アップダウンがあるとはいえ200km/hオーバーで駆け抜けるニュル北と、火山国である日本の峠コースは全くといっていいほど速度域が違います。まあそんなことはルノーにとってはどうでもいいことですし、このクルマを日本の峠に持ち込んでしまった人のちょっとした不幸に過ぎません。そしてもちろんそういう不得手なクルマを上手く操ることに喜びを感じる人もいるでしょう。

  ルーテシアの走りを後ろから見ていましたが、旋回姿勢はマツダ車のような後輪が巻き込んで曲げていく挙動がはっきり出ていてなかなか良さそうですが、ドライバーが過剰気味にブレーキングを繰り返すので、荷重が度々抜ける後輪がフワフワと変なリズムを奏でてしまっているようにも見えました。新型ルーテシアは全てDCTで2ペダル車なので、ヒール&トゥーの練習をしているはずもないので、このビビリ走行に関してはやや不可解です。こちらは下りになってから基本的にペダルを全く触らない「慣性走行」になっていて、ハンドリングだけでコーナーを抜けます。もちろん一定の速度まで上がったら制動はしますが、その速度に達しない段階で早くも前方のルーテシアに追いついてしまうありさまです。こちらはガソリン残量が15%程度と軽量なコンディションで、助手席に人を乗せてこそいますが、かなり余裕のある下りでした。追いついて・離れてを3回ほど繰り返すと、ルーテシアがハザードを焚いて道を譲ってくれました。お礼ハザードを出しながら脇をすり抜ける時にちらりと見ると、どうやらあちらはクルマ好きな男2人組のようです。

  上りではやたらとすっ飛ばしていたクルマなので、ある程度は予想していましたが、後追いポジションになって今度はこちらを追い回す魂胆のようです。後ろのヘッドライトがアクセルを懸命に踏み込んだ挙動を示すように揺れました。「欧州車のくせに舐めたことしやがって!コーナー2つも過ぎればバックミラーから消してやる!」と高橋啓介のセリフみたいなのが頭にひらめき、こちらも下りでは初のアクセルオンで臨戦態勢に。もはや安全に走るためには突き放すしかありません。

  全くもって大人げないですが、やはり前輪ストラットのFFに突かれっぱなしになるわけにもいかず、コーナー手前でアウトからインに切り込んで鼻先をコーナー出口へ向けて、前輪と後輪の踏ん張りが理想的に釣り合うラインでトレースさせる、マツダ車らしい気持ち良いコーナーリングラインを採ります。余計なガソリンもないので、アクセルオンでもアンダー傾向は全くなく、外側のタイヤが「まだまだ余裕っす!」とばかりの手応えを見せます。とりあえずGHアテンザとルーテシアの最大の違いであるサスペンションの性能を目一杯使って突き放しにかかります。相手も道に不慣れなだけなら、後追いでだいぶ走り易くなるでしょうから、そんな簡単に突き放せるとは思ってませんでしたが、なんとコーナー2つで本当にバックミラーから消えてしまいました(なんだか運転が上手そうな書きっぷりですが、実際はかなり下手くそです悪しからず!)。

  その後も後ろを気にすることなく快走し、しばらく進んで深夜の相模湖駅前ロータリーに入り、クルマを止めてとなりで爆睡している彼女を起こします。凍てつく寒さの駅をふらついていると、なんと先ほどのルーテシアもロータリーにやってきました。おー良かった!まあ自己責任だけども事故ってたら後味悪いし・・・。さらにビックリなことにわたしのクルマの隣りに停めてきました。ちょっと離れたところからその光景を見つめていましたが「何か文句言われんのかな?」なんて思っていると、単に運転手を交代するためだったようです。しかしその後もなかなか発進しないので「待ち伏せか?メンドクサイな・・・」と年甲斐もなくはしゃいだ自分を後悔しました。寒いのでそろそろクルマに戻りたいけど、近寄るのもちょっと気まずい・・・。やはり雰囲気だけ楽しむといえども、公道での追っかけっこの真似事は止めておいたほうがいいですね。


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